足底腱膜炎について
足底腱膜炎の概要
足底腱膜炎は、足底にある厚い結合組織である足底腱膜に炎症が生じることで、かかとの痛みを引き起こす疾患です。この炎症は、長時間の立位や歩行、過度の運動、肥満、適切でない靴の使用などによって引き起こされることが多く、特にスポーツ選手やランナーに多く見られます。
難治性や治療に即効性を出すためのポイント①
「使い過ぎ」と思われやすいですが、まだ負担をかけていないはずの起床時の痛みや、運動をあまりしない中高年者にも多いのに違和感を覚えないでしょうか?
「使い過ぎ」と「動きの開始時の負担」の共通項目に「伸長反射の亢進」が挙げられます。その場合の治療ポイントは腰と股関節です。
上の動画で足の筋肉の収縮と腰の状態が関わっているのを確認できるかと思います。腰痛がない方でも、足の症状のある方には、確認していきます。
足底腱膜炎の発生機序
足底腱膜は、足のアーチを支える重要な構造であり、歩行や走行時に強い負荷がかかります。過度な負荷がかかると、足底腱膜に微小な損傷が蓄積され、これが炎症や痛みを引き起こす原因となります。特に、足のアーチが低下する扁平足の人や、過剰な運動によって足底腱膜に負荷がかかりやすい人は、足底腱膜炎を発症しやすいとされています。
難治性や治療に即効性を出すためのポイント②
扁平足の方だけでなく逆にハイアーチの方にも起こることを考えるとアーチの形状ではなく、アーチの変化率(機能性)があるかないかが実際にはポイントなのです。
つまり「形態の把握」ではなく「機能(可動性)検査」をする必要があります。
紹介している楔状骨の横アーチは、足の形態での把握やインソールでは改善しづらいアーチです。足には外見では分かりづらい機能がたくさん含まれています。
一般的な治療法とその課題
ストレッチや運動療法などの保存療法は効果が出るのに数ヶ月かかるとも言われており、実際に効果があったとは言い難いくらい経過が長くなってしまいます。
また「インソール」も靴を履いている時間が欧米ほど長くない日本では足の痛みの原因とは言えません。そして足の関節は下からだけではなく、上下左右、そして斜めにも力がかかるため、足裏だけのサポートでは効果はごく僅かとなります。
難治性や治療に即効性を出すためのポイント③
動作時の痛みの出るタイミングとその関節の機能を一つ一つ照らし合わせることで、問題となる足の骨(関節)その場で痛みの変化を感じることが出来ます。
難治性足底腱膜炎に対する当院の治療
陸上選手の治療を長いことやってきた中で、疲労が落ち着けば確かに痛みが治るのだが、走ればすぐに痛みが出る状態に苦労していました。しかし、腰部の治療を上手くできるようになってから、嘘のように足の痛みの治療がうまくいくようになりました。神経の調整がいかに重要かを10年前から感じて足の痛みには必ず腰の調整を入れています。
また学生時代に、インソールを作成する有名な治療で研修を2年ほどしていたのですが、インソールのように下から支えるだけには限界があり、横から、上からと様々な方向からの刺激がとても良い変化であるのも感じてきました。
効果が出るのに数ヶ月かかると言われる足底腱膜炎もうまくやれば3、4回で痛みが改善します。今後も新しい知見をチェックしながら技術も磨いていきます。
参考論文:
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