半月板損傷

半月板治療の現状

 膝関節の半月板は、大腿骨と脛骨の間に挟まり、荷重を均等に分散する役割を持っています。垂直方向の荷重が半月板によって伝えられるため、損傷すると膝の動きや安定性に影響します。
 
 かつては半月板を除去する手術が一般的でしたが、変形性膝関節症への進行リスクが高まることから、最近では保存療法や縫合術が主流です。関節運動や荷重の改善により半月板の再生が確認されており、徒手療法の重要性も増しています。

半月板の逸脱


  半月板の逸脱により「フープ機能(荷重分散)」が低下し、変形性膝関節症(膝OA)の発症や進行の原因になります。半月板逸脱は変形性膝関節症でよく見られ、関節裂隙の狭小化と強く関連しています。また、症状を悪化させる独立した要因であることが明らかにされています。
 
 半月板の逸脱しているエリアの関節裂隙が狭小しているため、その関節エリアの圧迫をとると改善できます。(画像は実際に改善した方のMRI画像)
 
 脛骨の外側不安定症が含まれている場合は、前十字靭帯機能障害が疑われるため、前十字靭帯に対する治療を行なっていきます。

脛骨の外方不安定症

 脛骨の外方不安定と前十字靭帯(ACL)には深い関係があります。ACLは膝関節の安定性を保つ重要な役割を果たしており、その損傷により脛骨の外方への不安定が生じることがあります。この外方不安定は、膝関節のさらなる損傷リスクを高めるため、適切な評価と治療が必要です。
 ACLだけでなく、膝の外側支持構造の状態も考慮した包括的な治療が、膝関節 安定性回復と再発予防に重要です。
 前十字靭帯の機能改善や外側支持機構の獲得を目的に脛骨の可動性を治療していきます。(こちらの画像も来院されたトップアスリートの画像です)

半月板の断裂


 

半月板損傷には縦断裂や横断裂、後根断裂などの種類があります。

  1. 縦断裂: 半月板後節の周径の1/4程度の縦断裂では、接触面積の減少や接触圧の上昇がみられ、荷重分散機能の低下が発生します。しかし、半月板の楔形構造により、損傷部の開きは最小限に抑えられるため、機能低下は20%程度に留まるとされています。

  2. 横断裂: 円周方向の線維が破綻する横断裂は、半月板幅の3/4程度までの損傷であれば、荷重分散能への影響は少ないです。

  3. 後根断裂: 膝の屈曲位で、半月板後根に近い損傷ほど、安定性が失われ、荷重分散能が低下します。

このように断裂の仕方でも機能による変化がありますが、断裂に至る大腿骨や脛骨の動きを改善すると多くの場合は、改善できます。機能が回復している間に、断裂の部位によっては自然再生できます。
最近は、縫合術が進化していますので、再生できないような断裂の仕方をしている場合も整形外科での手術と併用して来院される方も増えてきています。

半月板と関節包

 半月板は関節包を介して骨に固定されており、関節包の付着構造は半月板の安定性に大きな影響を与えます。
 半膜様筋は関節包に直接付着する筋肉であることがわかり、関節包の張力を調整していることが噂されています。当院では、この半膜様筋の機能改善を目的に治療を行っています。

大腿骨と脛骨の動きの触診

この検査で荷重時にどのような不均衡な力がかかっているかがわかります。
どの動きが硬く、どの動きが不安定になるかを見ていきます。

関節裂隙の触診

裂隙部の触診によって、半月板の逸脱や荷重時の力の逃げ方が予測できます。