仙腸関節障害

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様々な視点の重要性

The Importance of Diverse Perspectives

仙腸関節を研究し始めて早いもので20年が経ちました。
最近はロボット工学や画像診断の分野での研究が仙腸関節の分野においても盛んに行われるようになりました。
今まで徒手療法家の経験的観測での知見で伝承されていたものから、
いわゆる「エビデンス」が証明されてきています。
そんな最新の情報をアップデートしながら、経験医学を磨くことも続け、研鑽を続けていきたいと思います。

画像分析

触診と合わせて、骨の歪みを正確に判断していく。
(※画像所見のデータをお持ちの方は、参考にさせていただけますと幸いです。)

歪みによる左右差

荷重差に繋がり、過度なストレスの原因となる。

靭帯による仙腸関節固定

捻挫の様に緩んでしまうと、不安定となる。

神経障害

筋力低下や異常歩行の原因となる。

腰痛と股関節障害の鑑別診断

骨盤起因の異常姿勢や可動域制限。

画像がなくても各種検査で問題点を見つけ出す

関節の可動性を検査し、異常動作の有無を調べます。

 

仙腸関節と痛み

Sacroiliac Joint  Pain

神経痛と周囲靱帯の痛み

仙腸関節の痛みは主に3つに分けられます。
①仙腸関節(腔)の痛み
②周囲靱帯の痛み
③周囲神経の痛み

 


①の関節の痛みは動作時に起こりやすく、関連する股関節や脊柱の動作障害を起こす場合が多いです。
骨盤ベルトのような固定で悪化し、関節を緩めることで痛みの軽減と動作の可動域改善が期待できます。

②の周囲靱帯の痛みは、仙腸関節が不安定になると周囲の靱帯に負荷がかかり痛みを起こします。鈍痛が多く、重だるい不快な痛みとして表現される方が多いです。
骨盤ベルトで固定すると症状が軽減し、関節を緩めると痛みが悪化するため、AKAやSJF、カイロプラクティックのアジャストで悪化する場合は不安定性を疑います。
痛めている靱帯ごとに関節の不安定を起こしている方向が異なり、一つ一つの動作を細かく分析する事が必要で、難治例となっている場合が多いです。

③の神経の痛みは、原因が上部の腰椎にある場合も多く、原因神経の特定が難しく、特定できれば、その神経ごとに「脊柱の調整」・「仙腸関節の調整」・「股関節の調整」で改善が見られます。

大きく三つに分けていますが、
・最初は腰部の神経障害から臀部の筋肉がこわばり、結果仙腸関節を離解させ、周囲靱帯の痛みが起こったケース
・関節の不安定によって仙腸関節の運動軸が変化し、脊柱や股関節の運動障害も起こるケース

など、実際には複合で発症するといったような難治例がとても多いです。
 

仙腸関節と関連疾患

Sacroiliac Joint  Multimorbidity

股関節とのケース

仙腸関節と股関節の障害の関連

寛骨は両関節の構成に関与


 
股関節を形成する寛骨の臼蓋(受け皿)は仙腸関節の状態によって向きが変わり、大腿骨頭を覆う面積などが変わってしまいます。
 
変形性股関節症・臼蓋形成不全や股関節のインピンジメント・グロインペインなどがある方は、この仙腸関節を調整することで股関節の動きがスムーズになることがあります。
 
「あぐらがかけない」・「足を抱え込むと前側が詰まる」などの日常動作から、「ボールを蹴る」・「走る」などのスポーツ動作においても、ある動作の瞬間に骨盤がどのように向いているかを触診していくと、股関節の問題かと思っていた現象も仙腸関節の調整で改善することは珍しくありません。

 
参考文献:股関節インピンジメント症候群におけるX線所見による有病率と臨床転帰

股関節の動作制限と仙腸関節

後ろから見ている図


 

股関節の「臼蓋の後捻」が、変形性股関節症へと発展しやすい1つの要因だと言われています。この後捻は生まれつきの場合もあれば、仙腸関節の異常によって起こる場合もあります。
前述の 寛骨が回旋(仙腸関節の動作)すると臼蓋が後捻するために 股関節の可動域を著しく落とします
 
このような可動域の低下は、「 靴下を履く動作が出来ない」・「 足を持ち上げると痛む」・「 しゃがむ動作で股関節が詰まる」といった障害の要因となります。
しかし、これを股関節のみの問題として対処しようとしても上記が原因であれば改善しない事が分かるかと思います。
 
その為、股関節の障害であったとしても、周囲の状態把握も含め実際の問題点を見つけていかないと、改善には繋がりません。

 
参考文献:鼠径部痛に対する保存的治療の最適化

仙腸関節障害とFAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)

足を踏み込むとお尻から鼠径部が痛む


 
大腿骨寛骨臼インピンジメントでは、CAM手術した群と骨盤を10度後傾させた群では、得られる股関節の可動域変化が同等であると言われています。
 
股関節の付け根(鼠径部)の痛みが誘発されるため、一般的な骨盤後傾トレーニングを行い大腿骨と寛骨の衝突を防ぐのですが、それがきっかけで仙腸関節障害に至る方がいます。
 

参考文献:骨盤の前傾減少が大腿骨寛骨臼インピンジメントの可動域に及ぼす影響

仙腸関節障害

神経痛?股関節症状?

 
仙腸関節は、本当に面白い変化を起こすこともありますが、やはり前記で説明してきたような腰部の病態と併発していることがほとんどなので、これだけをやれば良いということはまずありません。

そもそも仙腸関節を安定させる筋肉や靭帯は腰部や股関節に付着しているため、腰部や股関節が異常を起こしたために仙腸関節に問題が生じるということも普通にあるからです。

 
参考文献:股関節障害と仙腸関節異常

腰部とのケース

仙腸関節と腰部の関連

靭帯による仙腸関節の安定


 
あたかも「仙腸関節が坐骨神経痛や股関節の痛みを解決してくれる」みたいに見て取れてしまいますが、冒頭でもお話ししたように、「なぜ仙腸関節が悪くなるのか」を解明していかなければなりません。
 
仙腸関節の安定を図るのに第4腰椎と第5腰椎から伸びる腸腰靭帯が仙腸関節の安定に関係しているのでご紹介します。
 
椎間板の圧迫や腰椎の傾き・回旋などの状況によってこの腸腰靭帯の張力に変化が生じ、安定して強固な仙腸関節が圧迫を受けたり離開したりという状態へとなってしまいます。
さらに、固定が正常に出来なくなると周囲の筋肉で固定を代償していき、腰痛・背部痛にも繋がっていきます。
 
この他にも原因は無限大にあり、皆様の貴重なお時間をお借りして少しずつ解明しながら変化を伺う、そういう治療をおこなっています。

 
参考文献:腰痛が姿勢を制御する筋肉に与える影響

難治性の仙腸関節痛

複数の病態の混在が治療の複雑化に繋がる

 
実際の症例として、元々腰痛があり、立ち仕事が辛くマッサージで痛みのコントロールをしていたが、長時間の座り話後から痛みが骨盤に降りてきて仙腸関節の痛みに変化。
それ以降座っての作業が出来なくなり、立っているか横になるかをして極力座らないようにしていく。
ブロック注射は直後の痛みは薄らぐが数時間と効果が持続せずバキボキする治療ストレッチの治療後から更に悪化し、立っているのも辛くなってしまい、日常は横になって過ごすようになりました。
 
この様にいくら仙腸関節を治療しても効果が出ない、逆に悪化してしまう場合には、治療していく順序が大切になります。
「元々腰痛があった」・「長時間の座位から状態が悪化」という時系列から、仙腸関節の治療の前に効果が出る・持続する部位』を探し出し、そこから全体の治療計画を立てていく事が回復への第一歩となります。

 
参考文献:仙腸関節障害における手技と運動療法の効率

椎間板症・椎間板ヘルニア・神経根障害

椎間板への力学的負荷を読み取る


 
仙腸関節障害には、ほとんどのケースで腰部椎間板の問題が併発しているため、紹介していきます。
 
椎間板ヘルニアは膨隆タイプと脱出タイプに大きく分けられ、どの方向にヘルニアが脱出・膨隆しているかによって、病態が変わります。
脊柱管内に飛び出てくれば脊柱管狭窄症となり、椎間孔側の後外方に飛び出ると神経根障害となります。
この飛び出る方向は、椎骨の回旋・側屈・前方滑り・屈曲・伸展の力学的ストレスによるものなので、飛び出ている方向と関節の状態から症状が改善する調整方向を分析していくと改善できます。

飛び出ていなくても椎間板が変性を起こすとMRI画像で他の椎間板と色が異なる変化を来たすことがあります。さらに悪化すると上下の椎骨の椎体部分の終板と呼ばれる表面が変性を起こし(Modic変性)痛みを起こすことがわかってきています。

 
参考文献:腰痛に対する仙腸関節障害の有病率

座位と立位での仙腸関節の力学的変化

座っていられない、長い時間歩けない


 
仙腸関節には「このポジションが正解」というものはありません。役割から見ればそれは当然のことです。
 
上半身の力(重み)を下肢へと伝えるという大切な役割がある仙腸関節はその足の位置が変化すれば、力の伝え方も変化させなければなりません。
 
立位と座位では、大きな足が前方か下方かにあるだけではなく、重心が大きく前後に移動させられます。その際にかかる力学的変化に対しても仙腸関節がうまく機能しなければなりません。
 
「どちらの方が日常生活で長いか」・「痛みの出る姿勢は何か」によって仙腸関節に求められる動きも変わるため、力の掛かり方を分析することが必要となります。

参考文献:仙腸関節痛の診断と治療の選択肢

変形性腰椎症 側弯症

画像診断と力学的分析

Sacroiliac Joint

仙腸関節の障害

一番問い合わせの多い「仙腸関節の障害」についてご説明します。
 
仙腸関節はその前方腰部の神経が走り抜け、その下方には坐骨神経が走行するため、 神経痛ととても関連がある関節として近年注目されています。
 
股関節は、仙腸関節を構成する腸骨(寛骨)と直接接触しているため、 股関節疾患を患う方の多くは、この仙腸関節の機能制限を患っていることが非常に多いです。
 
また女性で言えば、骨盤内腔とほぼ同じ大きさの胎児の頭を通すために、 出産時に仙腸関節は安定性を一度失うことを経験する事になります。

仙腸関節が及ぼす様々な症状

仙腸関節障害による症状
骨盤を下から見ている図
仙腸関節を構成している寛骨は、股関節を構成している骨であるため、大腿骨頭を受け止める臼蓋の被覆状態を変化させます。
仙腸関節の非対称性によって、大腿骨頭への被覆面積の変化を起こし、その結果、変形性股関節症など股関節疾患を起こすことがあります。
逆に言えば、股関節の障害によって仙腸関節も異常を来します。
参考文献: 股関節と仙腸関節
 
仙腸関節は、恥骨結合によって大きく障害を受けないような構造になっています。
つまり仙腸関節に負担がかかれば、恥骨結合にも影響を出していますため、グロインペインと呼ばれる鼠径部の痛みや妊娠中や産後の恥骨や骨盤周囲の痛み(骨盤帯痛)を起こします。
右外側から見ている図
仙腸関節は、自分自身では意識的に動かすことのできない関節です。
では、なぜそんな関節に異常が生じるか。
それは、脊柱や股関節の動きの影響を受けるからです。
 
この動画では、足を上げる動作における3つのパターンを紹介しています。
①股関節単独での動作
②大腿骨の動きの方向を寛骨が一緒になって動いているパターン
③大腿骨の動きを骨盤全体で引き受けたパターン
 
この3つともこれだけでは異常とは言い切れないのですが、ある目的に対してどのように動く必要があるかを確認して、その目的に合った動作ができているかを触診と検査で確認していきます。
 
例えば、
ランニングでは②と③は推進力がロスしてしまいます。
車の運転では、リクライニングを効かせて③の動きを利用した方が良いかもしれません。しかし、それも強く行えば、腰に負担がかかってしまいます。
 
つまり、①も可能だし、③も可能。また別の動作もやろうと思えばそれができるというのが機能性が適切に備わっている、ということになります。
仙腸関節と坐骨神経
骨盤を後から見ている図
仙腸関節の状態と坐骨神経の走行

仙腸関節と坐骨神経との関連

坐骨と大腿骨におけるインピンジメント(衝突)が報告され、股関節の前側だけでなく、後方部での股関節のインピンジメント疾患も一部の学会で注目を浴びました。
 
それは、 人工股関節置換術の術後も続く臀部から鼠蹊部にかけての痛みを分析した結果、坐骨結節と大腿骨の小転子の間で圧迫が起き、坐骨神経を刺激していたという発表でした。
 
元々股関節の機能を低下させている方の多くは、トレンデレンブルグ兆候と呼ばれる骨盤の傾きが存在しています。その傾きによって坐骨神経が障害されます。
これは仙腸関節の機能障害によっても寛骨が傾くため、坐骨神経痛の方に稀にではありますが、起こっている場合がある状態です。

脊椎の検査治療・仙腸関節の検査治療

各治療法による効果の期待値

治療の種類 役割 ポイント
ブロック注射 痛みを見つけるための検査
・仙腸関節ブロックを分けると「仙腸関節腔」、「周囲神経」、「関節周囲の靭帯」の三つがある。どこへの注射がどの程度の効果だったのかによって「あなたが抱えている仙腸関節障害」がどの組織だったのかが予測できる。
・効果の有無、痛み軽減の持続時間から病態と程度が予測できるのでブロック注射を行った場合は、教えてください。
固定

着けている間の仙腸関節安定
・仙腸関節と関節周囲の靭帯をベルトで固定することで、安定性の向上による痛みの軽減ができる。
・捻挫のような緩みによる痛みには効果が期待できる。

・ベルトによる動きの制限が起きるため、腰部や股関節など別部位の痛みが出ることがある。これを主症状と思い込んでしまう場合があるため、痛みの出た順序が重要となります。
検査と一時的な鎮痛
・鍼自体に鎮痛作用があるため、その効果は期待できる。
・複数本刺すため、実際に何処で効果が出たのか判断がしずらい。
・ブロック注射と同様に検査の役割が強く、鍼自体に治療効果はないため、時間経過と共に薄れていく。
運動 根本的な解決には繋がらない
・自身で動かせる関節ではない。
・痛みが強い場合、動かすことが逆効果になる。
・脊椎や股関節の動きによって相対的な変化は期待できる。
ストレッチ 根本的な解決には繋がらない
・捻挫の様に関節が緩んだケースには悪影響となる。
・仙腸関節を固定する効果はない。
・腰部や股関節の柔軟性向上でストレス軽減は期待できる。

股関節・膝・足が及ぼす影響

人間は歩行する際、下からの床反力を常に受けています。
運動連鎖が正常に作用していれば痛みなどは起きませんが、怪我や日常の姿勢によって運動連鎖が崩れると痛みや痺れとして身体に現れます。
 
腰椎や骨盤は足首や膝がどんな位置に存在しているかによって、負担のかかる場所が変わってきます。例えば過去に足関節捻挫の既往がある場合、小指側に体重が乗りやすくなる内反足になる傾向にあります。
 
内反足になった場合、バランスを取るため様々な関節が代償を行いますが、腰椎や骨盤が代償を行った場合、腰椎や骨盤は身体の中心よりも外側に引っ張られます。
骨が外側に引っ張られると腰方形筋や腹斜筋、殿筋群の筋肉が過緊張を起こし腰痛や股関節障害になったり、外側に偏位した骨が神経を圧迫し神経痛などを引き起こします。
ランニングをやっている方に多く起こるタイプの腰痛であるため、こちらのページも参考にして下さい。
ランニング障害   スポーツコンディショニング

 
下肢の腰痛への影響

関連部位の症例動画

腰部脊柱管狭窄症による足の運動障害


【足が上手く動かない・指先の感覚が鈍い】
このような症状では、腰や骨盤の治療をすることによって、一回目から効果が実感できる場合が多いです。もちろん一回で症状を全てなくすことは出来ませんが、回数を重ねるごとに動きが良くなっていきます。

スポーツ外傷と身体の癖の関係(肉離れ)


こちらは腰の症状ではありませんが、外傷後痛みが引かない・再発する原因には神経障害が隠れている可能性が高いです。
動作分析と共に肉離れと腰の関係について説明しています。
 

腰や股関節の障害に対してのブログはこちら
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